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なんだか仰々しいタイトルをつけてしまったが、要はガやチャといった富山弁にしかない語が、どのようなルールに従って使われているのかを調べてみようというコーナーである。
その1:か゜
とりあえず、富山弁には「が」が非常に頻繁に出てくるということだけでも知っておけば、初めて富山出身者と話すときにいちいち「その『が』って何なんだよ!」と心の中で泣き叫ぶことはない。富山弁文法の鍵を握る一文字かもしれない。なお、必ず鼻濁音にするのがポイントである。
1. 疑問文の文末につく。「なんで遅くなったが?」=「なんで遅くなったの?」
なーんだ、要するに文末にくっつくものなんだ!と思ったあなたは早計である。「が」の活動範囲はこんなものではない。こんな用例もある。
5.「忙しいがです」=「忙しいんです」
ここまで例を挙げれば、気づいた方も多いだろう。そう、富山弁の「が」は標準語の助詞「の」とほぼ同じ役割を果たしているのだ(5と6の標準語訳では、「の」が「ん」に音便化している)。頻繁に出てくるのも頷ける。
というわけで、こういう用例もある。
それでもよく分からない!という人は、これだけ覚えておこう。「何しとんが?」。What are you doing? だ。この1フレーズの意味が分かるのと分からないのとでは雲泥の差である。
なお、「が」は「ん」に音便化することもしばしば。ただし、例文4〜6ではそれは起こらない。
その2:ちゃ
1. 「出かけてくっちゃ」=「出かけてくるよ」
例文1では標準語の「〜(だ)よ」と同じような意味で文末に付けられている。2は「AならばBだ」という仮定の文で、「ちゃ」は「ならば」に当たる。また3では、主語を表す「は」とほぼ同じである。ただし、「私ちゃ学生です」のような言い方はしない。例文3における「ちゃ」は、「〜というのは、〜とは」くらいの意味。
例文1のように、動詞の終止形に「ちゃ」がつくときは語末の「る」が促音便化することが多い。「あげる」+「ちゃ」=「あげっちゃ」、「くる」+「ちゃ」=「くっちゃ」という具合。ただし、五段活用動詞の場合は終止形の語尾が「る」でない(「置く」「読む」など)ため、促音便化が起こらない。
その3:け
これはそんなに難しくなく、疑問文の文末にくっつく。「が」または「ん」と一緒になることが多い(1と2はその例)。
1. 「はや疲れたがけ?」=「もう疲れたの?」
例文2の「ん」は「が」が音便化したものと考えられるので、1と2はほぼ同じと見てよいだろう。この「け」、なくてもどうということはない一文字である。「が」が標準語における「の」の役割の一部に相当するのに対し、「け」に相当する語は標準語には見当たらない。例文を見れば分かるとおり、標準語の疑問文は「の」で終わるのであり、そのあとに何かが付くことはない。ところが富山弁では「が」(これが「の」に相当する)のあと、さらに「け」を付けるのだ。「け」ちゃ、なんなんけ?
その4:消える「く」
形容詞の連用形に「ない」「なる」「する」などがついた場合、富山弁では「く」がどこかへ行ってしまう。
1. みじかく(短く)+なる=みじかなる
上の3つの例は、標準語ではそれぞれ「短くなる」「明るくする」「苦しくない」と、「く」が入る。その「く」が富山では抜けてしまっているのは一体どうしてなのだろう?時代劇で「苦しゅうない」と言っていたりするのを考えると、富山で「く」が抜けるのは古語の名残なのか、とも思われるが本当のところは分からない。そして今日も富山の家庭では、母親が子供に「くらなる前に帰ってこられ」と言っているのである。
その5:現れる「らと」
その4で挙げた場合以外での形容詞の連用形は、これまた標準語と違って「語幹+らと」になる。「おそらと起きる」=「遅く起きる」といった具合。
その6:「し」は「い」になる
動詞の連用形に助詞の「て」が付いたとき、テの直前のシがイになるというもの。例を見てもらうのが手っ取り早い。
・さして(刺して)→さいて
このルールは終止形がスで終わる動詞限定。 |
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